一人睨めっこ
『そう、月よ。気付かなかった? 夜中、月は雲で隠れてたわ』

「それは気付いてたけど」

 明日は曇りかもなって思っていたのを覚えている。

『でもだんだん雲が無くなってきて――月が現れたの』

 優兄は駿兄から目線を外し、葛西を見ていた。

『多分その直後に偽崎が復活したんじゃない?』

「そうなのか……な?」

 突然だったから、月が出てたとか出てないとか覚えてない。

『そしてあんたは体を乗っ取られそうになってたんだよね?』

 葛西は確認するように俺に聞いた。

「……ああ」

 あまり思い出したくない事だな。

『でも突然、糸が切れたように――あんたは静かになったよね』

「そうだ、いきなりあいつの声が聞こえなくなって、体も元に戻った」

 その時、俺は葛西の考えを察した。
 まさか――

『丁度その時、朝日が出て月が隠れた――いや、月が隠れたから消えたのだと思うわ』

 やはり、月。
 どうやらもう一人の俺は月が無いと出てこれないらしい。
 あくまでも推測だが。

『成る程な……』

 隣で優兄が、納得したように言った。

 月――それがあいつの出てくる条件か。
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