一人睨めっこ

六節 家族

※葛西目線
 十年前――――。

「おかーさんっ!!」

『どうしたの真奈美?』

「はい、これあげる!」

『あらっ、折り紙の指輪?』

「うん!!」

『可愛いわねぇ〜、ずっとつけておくわ』

「わぁい!!」

『じゃあ、母さんお仕事行ってくるから。ちゃんとお留守番しててね』

「分かった!! いってらっしゃいっ!」


 いつもお母さんは、夜になると仕事と言って出かけていた。
 でも昼間とかは普通に接してくれたし、仲の良い親子だった。
 あの頃は私はお母さんを大好きだから、お母さんも私を大好きなんだと信じて疑わなかった。
 
 
 翌日――。

 今日もお母さんは仕事と言って出掛ける。

『じゃあ、行ってくるわね』

 そう言ってかざしたお母さんの手に、昨日の指輪がついていない事に気が付いた。
 もしかして、忘れていっちゃったのかな?と思い、私はお母さんの化粧台の周りを調べた。

「あ……これ……」

 出てきたのは、真っ二つに契られぐしゃぐしゃになっている折り紙の指輪だった。



 今考えると結構馬鹿らしいかもしれないけど、私は裏切られたって気持ちでいっぱいになって――泣いた。
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