一人睨めっこ

十節 夕方

「そろそろ……」

 午後3時。
 日没が近づいてきた。

 昨日の今頃、空は雲で覆われていたため日没後も月は見えなかった。
 しかし今日は……快晴。
 雲なんかほとんど無い。
 日没と同時に、月が輝き始めるだろう。
 そしてその輝きを浴び、もう一人の俺が――目醒める。

 場の雰囲気も、少し暗くなってきた。

「日没時刻は?」

『えっと――五時三十六分』

 淳が新聞を見ながら言った。

「後ニ時間半か……」


 ……
 …………
 ………………
 …………………………

『なっ、何か話そうぜ!!』
 淳がわざとらしく言った。
 どうやら静かなのは苦手らしい。

 いっつも周りうるさいからな。

「話そう――って、言ってもなぁ」

 俺はポリポリと頭を掻いた。
 優兄は漫画読んでるし、駿兄は寝てるし、チイラは駿兄にくっついてるし、真奈美は携帯触ってるし。
 


『あっ!!!!』

 真奈美が叫んだ。
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