一人睨めっこ
『まぁ、1年前ぐらいから付き合ってる』

 林田は少し照れながら言った。

『何で言ってくれなかったんだよー!』

 淳が口を尖らせて言った。

『恥ずかしいじゃんか』

 あ、やっぱり恥ずかしいんだ。

『で、今は麗香の両親が出かけてるから留守番してる訳』

 へぇ……両親公認なんだな。

「その高村麗香に会いたいんだけど――」

 俺は早速本題に入った。

『いや、それはちょっと――』

 林田は否定的な言葉を発した。

「何でだ? 別にお前の彼女取るような真似はしないし」

『当たり前だ!! お前なんかに取られるかよ』

 怒られた……。

『なんかアイツ、おかしいんだ』

「おかしい??」

 俺は聞き返した。

『麗香の親の話だと――昨日夜中に突然大声を出して自分の頭を叩き始めた――とか』

「昨日の夜中――」

 実況スレに書き込まれていた時間だ……。

『ずっと部屋に閉じこもってて……さっき俺も会いに行ったんだけど、泣き叫んでるんだよ』

「…………」

 きっと、俺と同じように頭の中から声が聞こえているんだ。

『俺どうすればいいか分かんなくてよ……アイツの彼氏なのに』

 そう言って林田は頭を抱えた。

 本気で好きなんだな、彼女の事。
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