涙雨の誓い
新月の夜、草原の中心で2人は向き合っていた。
「さぁ煉-レン-、早く私を祓え」
「葛葉-クズハ-…この方法しか無いのか?」
煉と呼ばれた青年は藍色の着流しを纏い、呪術の類いであろう文字が書かれた札を手に持っている。
一方葛葉と呼ばれた少女は白に紅葉の描かれている着物を纏っているが、その体は薄く、透けている。
「煉、わかっているだろう?早くしないと私は祟り神に成ってしまう。並ばお前の手で、…私を消してくれ」
「だが葛葉っ!!」
煉の瞳から水が零れた。それは止まることは知らず、ついに煉は嗚咽をもらし始めた。
葛葉は右手を煉の頬に滑らせの目元の口付けた。
「しょっぱいな…やはり人の子は弱い…。だがそれでいて儚く美しい。」
ふわり、と笑った葛葉はまるで月のようだった。
美しく、見守るような優しさに包まれ、それでいて──────
──────儚い
触れてしまえば一瞬で朽ちてしまいそうだ。