銀盤少年
拉致監禁
「そういや、狼谷ってコーチとかどうしてんだ?」
昼休み。弁当を食っていたらふと狼谷のコーチ問題を思い出して、ヒロに聞いてみた。
スケート競技に戻った狼谷だが、未だにコーチはついていない。
練習も俺と草太がクラブに行った後、一人残ってスポセンでやっているらしい。一応ヒロも残って練習を見守っているようだけど。
あいつの実力と実績ならコーチなんてすぐに見つかるだろう。なんなら俺の先生を紹介したっていい。
紹介したところで「余計なことをするな」とか「ロクな指導者じゃないんだろ」とか、どうせイチャモン付けるんだろうけど。
「嗚呼、今シーズンは一人で乗り切るみたいだよ」
「一人で!?」
「自分一人の力でどこまで行けるかやってみたいんだって。ケンちゃん自身まだスケートを続けることに蟠りを持ってるようだから、己に科した制約なんだろうね」
眉尻を下げてヒロは言う。
己に科した制約。一見格好良く聞こえるけど、なんというか……。