銀盤少年
まさか自分に話が振られるとは思っていなかったのか、草太は首をぶんぶんと横に振って全力で否定している。
でも本当は困惑してたはずだ。
草太のことだから、きっとどうにかしようと慌てふためいていたに違いない。
「二人はトップ選手だから無駄に時間を過ごせるかもしれないけど、草太君にはその無駄な時間が貴重なんだよ。俺の言ってることわかるよね」
普段から人の悪口を一切言わないヒロが、皮肉たっぷりに毒を吐いてきた。
相当お怒りのようだ。お怒りだからこその腹パンなんだけど。
「全てこいつが悪い」
そしてこいつはこんな状況でも平常運転。逆に安心するわ。
すかした顔しやがって。大体お前のせいだっての!
「へぇへぇそうですね。誰かさんの器が小さいから、俺が譲歩しないといけないですもんね。すまんな狼谷くん。俺様の海よりも深い懐で、今回の件は水に流してあげようじゃないか」
「てめぇ……ふざけんじゃねえぞ!」