銀盤少年
「……あのさ、曲決まったか?」
とりあえずスケート関係から。
無口で俺から話しかけても余裕でスルーする奴だが、スケート関係の話題は一応答えてはくれる。
めっちゃ不機嫌そうな顔をするけどな。
「フリーはまだだ。ショートは“フラメンコ”で決まった」
やっぱスケートの話はちゃんと答えてくれる。
辺りが暗いから表情までは読めないけど、きっといつも通り眉間に皺を寄せながら喋ってんだろうな。
「フラメンコかぁ……お前らしい選曲だな」
「お前もな。表現力のなさを有名な楽曲でカバーするとは、馬鹿なりに考えたじゃないか」
ふっと失笑。顔が見えない分イライラも倍増。
この野郎、人様が歩み寄ったら問答無用で迎撃態勢に入りやがって。
しかも人が一番気にしていることを的確に攻めやがって。つか、なんで俺のSP知ってるし。