銀盤少年

「今から跳ぶから良く見えろ」


そう言ってタクさんはリンクの中に視線をやる。


俺もリンクに顔を向けて仁を見つけると、丁度仁はジャンプの態勢に入っていた。


バッククロスでリンクの外周を周り助走をつけると、まずは直線上の軌道に……。


「え?」


抜けたような疑問の声は、着氷の衝撃音に掻き消された。


あれって3Lzだよな? バックのまま右足のトウを付いてたし、三回キッチリ回ってたし。


でもおかしい。他のルッツとは決定的に違う。


……そっか、ジャンプのタメが全くないんだ!


予備動作がなくいきなり跳び上がったから、なんのジャンプを跳んだのか一瞬気付かなかった。


あんなジャンプ初めて見たぞ。てか、仁のジャンプってあんなんだっけ?


ジャンプの安定感は昔からあったけど、助走が短い上に予備動作ゼロのビックリドッキリジャンプじゃなかったはずだ。
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