銀盤少年

視野だなんだ以前に、片目がほとんど見えないという状況から絶望せずに、ここまで這い上がってきた過程は並大抵のことじゃないはずだ。


「俺達も見習わないとな」


タクさんの手がグシャグシャと俺の頭を掻き乱す。


昔から続くタクさんの癖。


弟の朝飛がいたからだろうけど、自分より年下の子の頭を撫でたり掻きまわしたりする癖があるのだ。


ちっちゃい頃はタクさんの手が凄く大きく感じていたけど、今じゃ俺とそんな大差ないかも知れない。目測だけど。


流石にちょっと恥ずかしいけど、不思議とタクさんの手は温かくて心地いい。あ、別にそっちの気はないからな。念のため。


「そうだ。お土産買ってきたから皆で食おう」


「まじですか!? やった! 超食います!」


「皆のだから超食ったら困るんだけど……」


タクさんのお土産はグミみたいな変わったお菓子で、これがなかなか美味かったからつい食べ過ぎて、皆のひんしゅくを買ってしまったのだった。とほほ……。
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