銀盤少年
タクさんに振り付けを見てもらえるなんて、これほど名誉なことはないし(滑り切れるかどうかは別として)なんかもう俺の知らないところで決定づけられてるっぽいし、諦めるしかない。
そうこうしている内に俺の番が回って来た。
ここで見てるからと笑顔で答えるタクさんと、ガンバッテクダサーイっとこれまた棒読みで送るケーゴの横を通り過ぎてリンクに向かおうとした瞬間。
「潰す」
世にも奇妙な空耳が鼓膜を襲った。
今のは聞かなかったことにしよう。空耳だから意味はない。
そう自分に言い聞かして、熱視線を送る二人に見守られながら、俺の曲掛け練習が始まった。