銀盤少年
やっぱこういう所は外国の血が混じっているのだと実感する。
日本語ペラペラだけど中身はロシアだ。独裁者だ。スターリンだ。
「曲のイメージに合わせて無理に格好つけてるのがバレバレ。今まで明るいポップな曲でしか滑ってこなかったからか、動きは固いし表情も引きつってるしで、背伸びをしてるのが目に見えて痛々しかったけど、部外者の俺が口を出すのはなんだから黙ってたんだ」
「もうやめて! 俺のライフはゼロよ!」
ここまでボロクソ言われるなんて酷過ぎる! 確かに俺も「ちょっと合わねえなぁ」とか思っていたけどさ!
これ以上は聞きたくないから耳を塞ぐが、一瞬ヒロの言葉がデジャブした。
そういや合宿の時も、連盟の人から「背伸び感がなくなって演技が自然になっていた」と褒められたっけ。
「タクさんが想像していたイメージは多分即興。冬の妖精と具体的な例をあげれば表現しやすいし、笑顔になるよう指示したのは、表情が解れれば身体のキレも戻ると踏んだからじゃないかな?」
「いやいや、そんなまさか。てか、なんでそんなことする必要があんだよ」
「表現の幅を増やそうと慣れないクール路線にチャレンジしたのはいいけど、180度路線を変え過ぎたせいで出来が酷かっただろ? だからタクさんは少し明るい要素を入れて、カズの良さを引き出そうとしたんだよ」