銀盤少年
牽制
夏休み真っ只中だけど、俺達に休みなんて存在しない。
連休返上で朝から練習。多くの部活がそうだろう。
全国でも有数なスピードスケートの強豪校でもあるうちのスピスケ部も、お盆の日を除いてほぼ毎日練習が入っている。
スピスケ部の練習があるということは、フィギュアスケート部の練習環境もあるというわけで、俺達もほぼ毎日朝から練習を行っていた。
スケートクラブに所属しているカズと草太君も、朝からこちらに顔を出している。
いつもなら休みの日はクラブのリンクに一日中いるのだけど、案外夏場は涼しさを求める人が多くてリンクが混む。
だからこっちで自主練をして、ピークが過ぎる夕方頃に本来の練習拠点へ移動している。
効率は良さそうだけど、だからって長時間コーチ不在のまま練習するのは如何なものだろう?
そう二人に苦言を呈してみたら、「ヒロがいるから問題ない!」と即答された。
二人は問題ないかもしれないけど、コーチの方は心配するだろう? と続けたら、そのコーチは「ヒロ君になら任せられる」と言っていたらしい。
どうやら二人のコーチも、俺のことを信頼しきっているようだ。