銀盤少年
悪者同士の悪い会話。
いや、この場合悪者は俺一人か。
他人の教え子の指導方針に遠回しでケチをつけているんだから、悪いのは100%俺の方だ。
「なんだかややこしいね。面倒だからお互い本音で喋ろうか。ヒロ君には全てお見通しみたいだし」
「まだ身体が出来上がっていない高校生に何吹き込みやがったクソコーチ」
「……本音と悪口は全く違うよ」
「失礼。ロシアでの生活が長かったので、敬語が上手く使えないんです」
「それだけ言えれば十分だよ。で、ヒロ君は俺が焚きつけたと思っているようだけどそれは違うよ。提案してきたのはカズの方だし、俺はそれに乗っただけさ」
「焚きつけるだけでなく、鎮めるのもコーチの仕事だと思いますが」
「うちは放任主義だからね。やる気のある子には全力でサポートをするのがうちの流儀なのさ」
「放任主義とは便利な言葉ですね。何が起きても選手個人の自己責任というわけですか」