銀盤少年
大分昔の出来事だけど、あの時の周囲のピリピリとした空気はよく覚えている。
俺でさえ動揺するのだ。当事者の心境など想像したくない。
「そっか。そうだよね。余り良い話題とはいかないし」
ふぅ……と息をついて、ヒロは言う。
「でもこれで、五人目の部員は決定だね」
先ほどの神妙な顔つきとは一転して、イケメンスマイルを俺に向ける。
五人目の部員って、まさか……!
「狼谷を入れるのか!?」
「相手にとって不足はないだろ」
「でもあいつは……」
確かに狼谷が入ってくれれば心強いが、先ほどの会話から推測するに奴は絶対に入部しない。
旧友のヒロの説得にすら応じないような状態だし、入部させるなんてとてもじゃないが不可能だ。