銀盤少年

草太君に至ってはあのコーチが見ているから問題ないはず。


残る不安要素は……。


「ヒロく~ん!」


おっと、救世主様のご登場だ。


「お疲れ様。ごめんね、わざわざ運んで来てもらって」


「ううん。近いんだから気にしないで」


大粒の汗をハンカチで拭いながら、優希ちゃんは肩に下げている大きな紙バックに手を突っ込んだ。


じゃじゃーん! と地声のSEを付けながら取り出したそれは、俺の想像以上の出来栄えで、たまらず歓声を上げてしまったほどだ。


優希ちゃんが手にしている物は、俺がこっそり頼んだケンちゃんの衣装。


カズの衣装は優希ちゃんが全て手作りしていると聞いたから、物は試しに相談してみたら嫌な顔せず二つ返事で承諾してくれたのだ。


黒地の衣装に現役時代のケンちゃんを思い出す。
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