銀盤少年
見事立て直したと言いたいが、ポーカーフェイスの裏で少なからず動揺はあったみたいだ。
レベル取りの要素“同一姿勢で八回転以上”が出来てなかった。
静かに音楽が鳴りやむと、龍の演技が終わる。
周囲から小さいながら拍手が起こるが、本人は浮かない顔。
ステップでの転倒がおしかったなぁ。あれがなければほぼ完璧だったのに。
それでも結構な点は出るはずだ。
ジャンプは全部決まってたし、スピンも取りこぼしがあるかもしんないけど、レベル3ぐらいは取れてるはず。
ステップシークエンスの転倒は……まあ、ジャンプで扱けるよりは全然マシだ。
おっと、観客気分はここまで。
リンクからキス&クライに向かう龍とは対照的に、俺は戦場へいざ赴く。
この瞬間が一番嫌いだ。
心臓が爆発しそうになるくらいドクドク騒ぎ出して、胃の中が逆流しそうになるくらいの緊張感と嫌悪感が襲いかかる。