銀盤少年
嘔吐寸前なほどのあがり症でチキンな俺が、六分間練習での調子やジャンプの成功率を分析出来るほど冷静でいられるのだ。
吐き気なんてすっかり忘れて軽くシングルジャンプを跳んでみたりと、自分でも驚くほどの変貌ぶり。
これが俗に言う“やる気スイッチ”なるものなのか?
なんだろう。俺自身よくわかってないから、上手く説明出来ない。
試合の度にこの感覚に襲われる。
もしかしたら他の選手もそうなんじゃないかと思っていたけど、周りに聞いてみたら「色々考えたりはするけど緊張はしてる」と言うから、これは俺特有の物なんだろう。
緊張しまくりで硬くなってた人物が、いきなり吹っ切れることなんてあるはずがない。
これはマジで二重人格なんじゃないだろうか?
最初はちょっとこれヤバくね? 精神科とか行った方がよくね? などと心配になってたけど、試合の時にしか発動しないから未だ先生にも言っていない。
どの道どう説明すればいいかわかんないから、言うに言えないんだけどさ。
一つの身体に二つの人格。