銀盤少年

電光掲示板を横目で確認しながら、先生から最後のアドバイスを受け取る。


六分間練習で3Lzが何度か失敗したから、その辺りの指導を受けた。


正直言うと、先生の言葉はほとんど右から左に受け流している。


冷静な俺の集中力は龍の得点発表とほぼ同時にピークに達して、周囲の雑音を完全にシャットアウトしていた。


それでも会場に流れる俺の名前とジャパンコールはしっかりと聞き取っていて、先生と目を合わせて互いに頷くとリンクの中央へ駆けて行く。


口元を右手の甲で拭うと、薬指につけたリングの冷気がひんやりと唇に伝わって。


刹那、俺の集中力は切れた。


やる気スイッチがoffになると、冷静な俺は裏に引っ込んで、普段の俺が表に出てくる。


(あ、戻った)


心の内で呟くが、いつものことなので気にしない。


今まで散々練っていたイメージとか分析とかが吹き飛ぶことで、主人核の俺が身体のコントロールを得たとわかるのだ。
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