銀盤少年
よりにもよってこの日にストライキなんて、タイミングが悪すぎる。
別の空港から飛び立てたとしても、今から出航ではとてもじゃないが間に合わない。
いや、もしかしたら既に飛び立っているかもしれない。
連絡がつかないのも、ロシアにいるからじゃなくて飛行機に乗っているからで……。
だとしても間に合わない。今日本の上空にいたとしても、中部国際空港からここまで二時間以上はかかる。
SPは確実に無理。どこでもドアがない限り間に合わない。
「どうすんだよヒロノ。このままじゃ出場すら出来ねぇぞ」
「ヒロ先輩……」
駄目押しでもう一度電話をかけるが、無機質な女性の声が聞こえてくる。
奇跡を望まない方が賢明か。クソッ。
「仕方ない。ケンちゃんをショートに移そう。音源は持ってきてるよね?」
「嗚呼」