銀盤少年

必要ないとは思ったけど、念のため両方の音源を持ってきて正解だった。


衣装はないけど仕方ない。どうせ両方とも黒い衣装だし問題ない。


カズの方も試合からそのままこっちに来るから、フリーの衣装と音源は持ってくるはずだ。


フリーまでに間に合えば、カズがフリーを滑ればいいだけのこと。


幸い東ブロックの強豪は俺達を除いて二チーム。


元世界ジュニアチャンピンの朝飛・熊川チームと、全日本ジュニア二位の田中チーム。


他のチームは正直どんぐりの背比べ。俺達が総崩れしなければ、十分予選突破は出来るはず。


「兎に角乗り切ろう。先生はカズのケータイに電話して、繋がるまでかけ続けてください」


「え? いやでも俺は」


「理事長に告げ口してもいいんですよ? 部活動中一度も顧問が顔を出したことがないって。PTAと教育委員会にも報告します」


「電話だな! 任せろ!」


「ケンちゃんと草太君はそろそろ公式練習が始まるからリンクに行ってて。後のことは俺と優希ちゃんがなんとかするから」
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