銀盤少年

「でも……」


「今は自分の演技に集中して。カズが到着した時に最下位だったら洒落にならないだろ?」


動揺するなと言う方が無理な話だ。


それでも二人には集中して演技に挑んでもらわなくてはならない。


コクリと草太君は頷いて、荷物を片手にロッカールームへ走って行く。


だけどケンちゃんはその場に残って、じいっと俺を見つめていた。


「ヒロノ」


「わかってる」


名前を呼ばれただけ。それでも言葉の裏に隠された想いは勝手に脳内で訳される。


「覚悟を決めろ」「腹をくくれ」


いずれにせよ、俺にとって朗報ではないことは確かだ。


踵を返してケンちゃんも戦場へ向かう。
< 259 / 518 >

この作品をシェア

pagetop