銀盤少年
「でも……」
「今は自分の演技に集中して。カズが到着した時に最下位だったら洒落にならないだろ?」
動揺するなと言う方が無理な話だ。
それでも二人には集中して演技に挑んでもらわなくてはならない。
コクリと草太君は頷いて、荷物を片手にロッカールームへ走って行く。
だけどケンちゃんはその場に残って、じいっと俺を見つめていた。
「ヒロノ」
「わかってる」
名前を呼ばれただけ。それでも言葉の裏に隠された想いは勝手に脳内で訳される。
「覚悟を決めろ」「腹をくくれ」
いずれにせよ、俺にとって朗報ではないことは確かだ。
踵を返してケンちゃんも戦場へ向かう。