銀盤少年
この前メールしたら『エントリーはするけど控えだから出ないよ~』って言っていたのに、ちゃっかり出場してるじゃないか。嘘つきめ。
「仁が病院に行ってるからピンチヒッター。なんかアメリカから有名な眼科の権威が来日しているらしくて、左目を診てもらうんだって」
「そっか。良い報告が聞けるといいな」
仁君がいなかったのは、不幸中の幸いだ。
もしこの状況でケンちゃんと仁君が再開したら、さらにややこしいことになっていただろう。
「さっき狼谷君に会ったけど、仁のこと気付いてないの?」
「エントリーしてるのは知ってる。ケリを付けるって言ってたよ」
「そっか。じゃあ残念だったね」
「いや、寧ろありがたいよ」
ケンちゃんは嗚呼言っていたけど、実際会えば多少なりとも心は乱れるはずだ。
日頃から相当の覚悟を持っていたとしてもだ。