銀盤少年
本当にツイてない。今日は厄日だ。
草太君が俺の元にやって来る。
いけない。俺が動揺してどうするんだ。まずは目の前の問題を処理しよう。
「回転不足を気にしたら抜けやすくなる。思い切って跳べばいいから」
コーチがいないから、俺が代理でアドバイスをする。
アドバイスと言うには随分お粗末なものだけど、実際六分間練習で回転を気にし過ぎて身体が固くなっていた。
気持ちはわかるけど、悪いイメージを持ったまま挑んだら絶対に上手くいかない。
「後にはケンちゃんが控えてるんだ。予選なんだし、気楽にいこ?」
「……はいっ!」
草太君の名前が呼ばれる。
少しでも緊張がほぐれるように肩を揉んで送り出すと、草太君の表情から少しだけ固さが抜けていた。
まずは目先の壁を乗り越えなければ。カズの問題は先送りだ。