銀盤少年

ただでさえ男子のビールマンは珍しいのに、ラストを2Aとはいえジャンプで〆たのは印象に残る。


見事な作戦勝ち。戦略としては満点だ。


「やっぱ身体柔らかいといいなぁ。タク兄もやればいいのに」


「タクさんビールマン出来るの?」


「あそこまで綺麗じゃないけどそこそこはね。けど腰痛めるからやらないみたい」


それは懸命なご判断。あんなポジションをやり続けたら最悪ヘルニアにだってなりかねない。


あれは生まれつき身体が柔らかくて、尚且つ腰を痛めないように細心の注意を払っている草太君だから出来る技。


身体の構造上どうしても筋肉が付きやすい男子選手が、生半可な気持ちでやっていい技じゃない。


と、演技を終えた草太君がやって来た。


「お疲れ様。良い演技だったよ」


出入口付近で演技を見守っていた俺は、リンクから上がった草太君にブレードカバーを手渡して、労いの言葉をかけた。
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