銀盤少年
カバーを嵌めると、今度はタオルと飲み物を手渡してポンッと肩を叩く。
「ありがとうございます。でもルッツでミスっちゃいました」
「些細なミスだよ。一番滑走であれだけ出来れば十分だって」
「うんうん。凄く良かったよ」
「あ、朝飛選手!?」
なにやら驚きの声をあげる草太君。
視線はもちろん朝飛に向けられていて、瞳は忙しなく泳いでいる。
あれ? 草太君と朝飛って初対面なの?
カズと朝飛が仲良しなのは知ってたから、その流れで草太君とも面識があると勝手に思い込んでいた。
でも考えてみれば、草太君が本格的にスケートをやり始めたのは中学二年生の時。
その時朝飛はロンドンから日本に戻ったばかりで、シニアで闘っていたから面識がないのは当然といえば当然か。
「どどど、どうしてヒロ先輩が朝飛選手と!?」