銀盤少年
頭の中でイケメンという単語を連呼していると、ヒロの唇は緩やかに弧を描いた。
「そんなに迷惑?」
「迷惑に決まってんだろっ……!」
ですよね。狼谷が怒るのも少しわかる。
学校に来たらヒロに勧誘され、家に帰っても家族からスケートを続けろと言われる毎日。
ストレスが溜まらない方がおかしい。
「そんなに嫌なら」と、ヒロは言葉を続ける。
笑みは崩していないのに、美しい碧眼はどこか挑戦的に映って見える。
「俺と勝負しよう」
「勝負?」
「SP(ショートプログラム)一本勝負。こっちが勝ったらスケートを続けてもらう。ヒロが勝ったら今後一切ヒロには関わらない。どう?」
衝撃的な展開に、元々おつむが弱い俺の思考が追いつけるわけがない。