銀盤少年
「あっ? ふざけんな。全然ダメだろ」
全然ダメって……なにが?
スピンとステップのレベル取り云々は二人で決めたことだから納得してるはず。
ということはジャンプのミス?
3Aは勢いがありすぎて、ビシッと着氷を決めることが出来なかった。
コンビネーションもセカンドジャンプで詰まったし、単独ルッツも若干両足ぎみで降りてしまった。
回転は足りていたけど、綺麗に決まったかと言われればうーんと悩む所。
完璧主義者め。
スピンの妥協もなんとか説得して渋々承諾したぐらいだから、余計にジャンプの小さなミスが許せないんだろう。
「えー! 凄く良かったよ!」
すかさず朝飛がフォローするが火に油。
これから滑る選手に、しかも全日本王者に褒められても、卑屈なケンちゃんには嫌味にしか聞こえない。