銀盤少年

スケートリンクの入り口には、めっちゃ貧乏ゆすりをしている鈴木先生が立っていた。


デカイ荷物を抱えた俺を見つけると、先生は「馬鹿野郎!」と開口一番に暴言を放った。


「なんでケータイ出ねぇんだよ! お陰でこっちは二階堂に脅されて……」


「そんなことより試合! フリーは!?」


「お前がケータイの電源切るから、俺はお前に鬼電しまくって……」


ダメだ。人の話聞いてねえ。


人様のことは言えないが、今はそれどころじゃないのだ。こんな所でお説教を聞く時間は俺にはない。


先生の話は無視して会場入り。


とりあえずヒロ達がいるであろうリンクサイドに向かうと、リンクの中では一人の選手が外周を回っていた。


今まさにフリーの演技が始まる瞬間。これは第一グループ? 第二グループ?


兎に角現状を把握しないと。


辺りを見回し皆を探すと、俺に向かってブンブンと手を振る輩と目が合った。優希だ!

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