銀盤少年
てことは、ヒロが一世一代の大芝居をして捻挫をした振りをすれば……ってバレるわ。
相手はプロだ。そんな子供騙しが通用するわけない。
「てかどうすんだよ! ヒロには滑るプログラムなんかねえし、そもそも音源は!?」
「まあまあ落ちついて、面白い物が見れるかもよ?」
「落ちついていられるか……って、なんで朝飛がここに!?」
「あ、始まるよ!」
無視ですか。俺の疑問はスル―っすか。
本当に天然というかマイペースというかなんというか……ていうかマジでこいつがここにいんの?
結局どんな状況になっているのかよくわからないまま、会場に音楽が流れた。
あ、これ知ってる。ドビュッシーの『月の光』だ。
淡い月光のような、美しくも儚げな柔らかい音色。フィギュアスケートの定番曲。
この曲人気あるんだよなぁ。全体的にスローな曲で俺には向かないけど。