銀盤少年
こんなことを出来る選手は一人しかいない。
橋本拓斗。“クリスタルエッジ”を持つスケーティングの天才。
アイスダンスと違いたった一人で、滑りだけでここまで魅せれる奴がタクさん以外にいるなんて……。
ジャンプは飾りといわんばかりに、ピアノの主旋律に乗せて氷の海を舞って行く。
月光のライトスポットが当たっているかのように、リンクの上で滑るヒロは輝いて見えた。
狼谷の表現とはまた違うタイプだ。
あいつが引き込み系なら、ヒロは寄り添う系。
自分の世界に引き込んで、心に強烈なインパクを植え付けるのが狼谷。
自分の世界を他者と共有しようと寄り添って、心に響いてくるのがヒロ。
優劣をつけるつもりはねーけど、
「なんて奴だ……」
狼谷の呟きが全てを物語っている。