銀盤少年
それでもあの時観たヒロの滑りは、怪我を感じさせないほど美しいものだった。
スケーティングだけなら朝飛と仁の比じゃない。それ以外にも、細かい技術だったり表現だったりと、シニアでもトップを狙えるものだ。
持って生まれた才能もそうだろうけど、仁みたいに影ながら努力したんだろう。
ジャンプのハンデを、滑りと表現でカバーするために。
でも結局、三回転は二種類しか戻らなくて諦めた。
天才が努力をしても、乗り切ることが叶わなかった大怪我。
「辛いな」
だからヒロは、俺達のために色々と尽くしてくれてるのかな?
自分が辛い経験をしてきたから、その分人に優しく出来るんだ。
……優しく?
腹パンしたり監禁したり毒舌吐いたりしているようなないような……。
まあうん。基本的には優しい、かな?