銀盤少年
言いかけていた狼谷の言葉は、ピタリと止まり吐き出されることはない。
いやいやいや、あのプライドの塊である狼谷さんが俺の演技を観て感化されたとかないない。絶対にない。
だからほら、狼谷が黙って俯いてるのはきっと痛みが激しいからだ。きっとそう。うんうん。
「……わりぃかよ」
つ、ツンデレだぁぁぁああああああ!
え、嘘、まじ? なんでツンデレ発動させてんの?
なんだかこっちの方が恥ずかしくなってきた。なんてーかこう、ムズ痒い。
「あんな目の敵にしてたのに、随分な変わりようだね。練習と試合じゃ全然違って見えた?」
「……まーな。初めて奴の試合映像を観たけど、普通に凄かった」
本当になんなんだろうこの状況は?
三位ぐらいで図に乗るなと毒を吐いていた狼谷が、素直に俺のことを褒めている。
嬉しいけどなんか不気味だ。全然萌えないんですけどツンデレに。