銀盤少年

「一つ上の領域?」


「正直俺もよくわからない。カズのスケートに対する想いは、愛情でもなければ情熱でもない。愛情も情熱も、適度な緊張感の中で育まれるものだからね。だから一つ上の領域。カッコイイ言い回しでしょ?」


「中二臭ぇぞ」


「ん? 俺達は高二だよ」


「……なんでもねぇ」


諦めたような声色で呟くと、包帯が巻き終わった足首を上下に軽く動かした。


まだ多少痛むようだが応急措置はこれにて完了。


後は適当に冷やして、痛みが引いたら念のため病院に診てもらう。多分問題ないだろうけど一応ね。


「まあ兎に角、俺達が頑張った所でその領域に行くことなんて出来ないよ。無理に片足を突っ込んで大怪我をしたら本末転倒だしね」


自分で言ってふと気付く。


今の言葉はケンちゃんだけでなく、俺自身に向けられた言葉であると。
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