銀盤少年

才能のある選手を見抜くことは、指導者なら簡単だ。


けど、カズの隠れた才能を見抜くことが出来る指導者はいなかったのだろう。


すぐ側で見守っていたあのコーチでさえ、兄の才能しか見えていなかったみたいだし。


身近にいた一哉だけが見抜いて……いや、もう一人いるか。


少なくともあの人は、それとなく感じ取っていたはずだ。


「いずれにせよ、恐ろしい存在ではあるね。草太君もそう思うだろ?」


先ほどからこちらを盗み見している草太君に向かって声を放つ。


チラッと見えた身体の一部は大げさに上下して、俯きながら全身を露わにした。


さっきからコソコソしてるなと思っていたけど、どうやらケンちゃんは全く気付いていなかったらしい。


柄にもなくカズのことを褒めちぎっていたのを、草太君に聞かれたのが相当恥ずかしいようだ。


顔を真っ赤にさせて明らかに動揺している。あははっ、珍しい光景だ。


カワイイナー(棒読み)
< 332 / 518 >

この作品をシェア

pagetop