銀盤少年

少し高めの声が背後から届く。


俺のことをサーシャと呼ぶ人は数少ない。ということは……。


「朝飛?」


「おっす!」


学校指定のジャージを着ている朝飛は、意気揚々と片手を上げてハグを求める。


背中に手を回してポンポンと軽く叩くと、なにやら周囲の視線がこちらに向けられているような気配を感じ取った。


(あれ、朝飛君じゃない?)
(遠いところから来たがいがあったわね)
(あの外国人誰だ?)
(東ブロックで鷲塚の代わりに出た)
(橋本朝飛の友人だったのか)


本戦も一般人の観戦は禁止されているから、こそこそ話をしている人達は出場チームの関係者だろう。


どうやら俺は予選会で目立ち過ぎたらしい。


鷲塚一樹の代役で出場した無名の選手が、高いPCSを叩き出してトップ5に入ったのだ。しかも三回転なしで。
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