銀盤少年
クォーターだから好奇の目を向けられることはあるけど、圭吾君のは敵意に似た感情が含まれている。
カズとは犬猿の仲のようだから、カズサイドの人間には容赦ないってことかな?
もしくは純粋にライバル心を持ってくれているか。
予選会ではフリーのトップは圭吾君だったけど、PCSだけを見れば俺とほとんど差はなかった。
彼からしたら全くの無名の選手が、三回転を跳ばずに自分と同じ演技構成点を出したのだ。何者かと疑問に思うのは当然だ。
「宜しくっす。今日は朝飛さん出場しないんすか?」
「うん。元々控え登録だったし、仁が出るから」
「そうっすか……ちょっと残念だけど俺頑張るんで、こっそり応援してください! それだけ伝えたかったんです。それじゃあ!」
一気に捲し立てて仲間達の元に戻る圭吾君。
どうやら信仰の対象はタクさんだけではなく朝飛も入るらしい。
結局俺と目を合わせたのは一瞬だけか。相当嫌われてるな。