銀盤少年
仁君と会えたのかな? ちゃんと話が出来たのかな?
確かめたいけど、試合は始まってしまった。
変にゆさぶりをかけて、調子を崩してしまったら大変だ。
ケンちゃんは自分の滑りで想いを伝えると言っていた。
だから俺達は、少しでもケンちゃんの心を乱さないように、そっと見守るしかないのだ―――
第一グループの出だしは、あまり好調とはいえなかった。
転倒に次ぐ転倒。シーズン初めじゃこんなものだろうけど、まともに滑りきれた選手は今のところゼロ。
会場の空気はどんより。ここらで空気を一新したいところで、カズの順番が回ってきた。
「気楽にいけばいいから。ジャンプもキテるし、自信を持って跳べば大丈夫」
「先輩ファイト!」
「部長ならここらで一発打ち上げなさい!」