銀盤少年
橋本世代三強の一角。元世界ジュニア王者にして、ジュニア最強と謳われていた橋本朝飛に唯一土を付けた天才。
海賊風の衣装を纏い、左目に黒い眼帯を付けた仁君。
事情を知らない人にはオシャレに見えるだろうその眼帯には、長年に渡る苦悩が隠されている。
一瞬、仁君がこちらを向いた。
視線の先が誰に向いているのかは、いちいち確認しなくても想像出来る。
「もしかして……」
俺の呟きは、会場の静けさに溶けて消えた。
使用する楽曲は『パイレーツ・オブ・カリビアン』
こちらも人気がある楽曲。毎年必ず誰かは滑っていて、ケンちゃんの候補曲にも入っていた。
被らなくて良かったと一先ず安堵。
同時に競技会に復活した彼がどこまで滑れるか、期待と不安が入り混じる。