銀盤少年
柔軟性もあるし軸も綺麗だったけど、回転速度にやや難あり。草太君の方が一枚上手。
レベル取りが出来たのは時間をかけたお陰。上手く長所を活用している。
「なーんだ。全然調子良いじゃん」
「えっ?」
ポツリと呟いた朝飛の言葉。調子が良いじゃんって、なんのことだ?
「んーとね、エントリー用紙を出す直前に『ショートで滑りたい』って仁が言い出したんだ。今日はあんまり調子が良くないからって。
復帰戦だし仕方ないねって話になったんだけど、仁の奴嘘ついたなぁ?」
「調子が悪い……か」
あの演技を見る限りじゃ、寧ろ絶好調だろう。
試合直前でフリーからショートに変更とは、よくショートの準備が出来たな。
俺達も予選会で急遽ケンちゃんをショートに移したけど、事前になにかしらのトラブルを想定して(まさか本当にトラブルが起こるとは夢にも思わなかったが)ショートの音源を準備していたから、直前のエントリー変更に対応出来た。
俺が心配性だから無理やり準備をさせたのだけど、仁君も俺と同じ思考回路なのだろうか?