銀盤少年
恐らくこの大会の鍵を握る滑走者、狼谷健太郎の演技が始まる。
「結果は気にしなくていい。その分、想いを込めて……ね」
「……嗚呼」
ヒロの言葉に軽く頷くと、狼谷の顔がこちらに向いた。
不敵な笑みを浮かべて、嫌味の一つや二つを浴びてくるんだろう。
『俺様の滑りに酔いな』とか、イタイ子発言をするに違いない。
それ全然かっこよくないから、寧ろ死亡フラグだから。
「行ってくる」
ほら、厨二病全開の痛々しい台詞を平然と……ありゃ?
思った以上に普通な言葉。というかめっちゃ爽やかに言い放ったんですけどこの人!
なんか悪いもんでも喰ったのか? 極度の緊張で本来のキャラを忘れてんのか?
「あーと……うん、頑張れよ」