銀盤少年

恐らくこの大会の鍵を握る滑走者、狼谷健太郎の演技が始まる。


「結果は気にしなくていい。その分、想いを込めて……ね」


「……嗚呼」


ヒロの言葉に軽く頷くと、狼谷の顔がこちらに向いた。


不敵な笑みを浮かべて、嫌味の一つや二つを浴びてくるんだろう。


『俺様の滑りに酔いな』とか、イタイ子発言をするに違いない。


それ全然かっこよくないから、寧ろ死亡フラグだから。


「行ってくる」


ほら、厨二病全開の痛々しい台詞を平然と……ありゃ?


思った以上に普通な言葉。というかめっちゃ爽やかに言い放ったんですけどこの人!


なんか悪いもんでも喰ったのか? 極度の緊張で本来のキャラを忘れてんのか?


「あーと……うん、頑張れよ」

< 380 / 518 >

この作品をシェア

pagetop