銀盤少年
狼谷の嫌味に嫌味で返してやろうと思っていたから、当たり障りのないことを述べておく。
きっと後者だな。緊張し過ぎて性格が変わった……というのは半分冗談だけど、極度の緊張状態にあるのは間違いない。
その理由は仁の存在。
昔の出来事なんだし男同士なんだから、面と向かってゴメンの一言でもかければすぐに仲直りできんだろ。
ウジウジしてねーでとっとと再開してこい! ……なんて最初は思ってたわけですが、事情が事情だからそう簡単にはいかないんだろうな。
自分がきっかけで大事な友人の眼を奪ってしまった後悔と自責の念。
仁だって俺達の前では眼のことを明るく振る舞ってネタにしてたけど、割り切れない想いだってあるはずだ。
それらが互いに反発し合って、深い溝を生んでしまった。
「狼谷!」
名前はコールされている。
急いで所定の位置につかなければならないのに、俺に呼びとめられて狼谷は不機嫌そうに眉を潜めた。