銀盤少年

「ループん時、着氷乱れてただろ? それ、腕絞めんのがちょっと遅いからだ」


直前練習で気になった所を上げる。


きっと狼谷本人も気づいているだろう。ヒロもそう思って、ジャンプに関するアドバイスは省いていた。


でももしかしたら、あいつ緊張で吹き飛んでるかもしれないから、念のためお節介をやいてみたのだ。


「うっせぇ。んなこと知ってる」


お、毒吐いた。本来のキャラクターを思い出したか。


ちったぁ落ち着きを取り戻したかな? 余計なお世話もしてみるもんだ。


金髪に黒の衣装。黒い靴に珍しい黒のブレード。


全身黒尽くめに痛んだ金色はよく目立つ。


漆黒の狼様の登場に、会場は静まり返る。


SPは上手くいったが、FPでは本来の実力が現れる。


演技時間の長さもそうだが、跳ぶジャンプの種類も増えて力量が問われるのだ。
< 382 / 518 >

この作品をシェア

pagetop