銀盤少年
足をクロスさせてループを跳ぶ態勢になるが、スピードが全然足りない。
案の定パンク。一回転になっただけならまだ良かった。
最悪なのは1Loで転倒したこと。
抜けたジャンプとはいえ、単独のシングルジャンプで扱けるなんて相当だ。
もう我慢できねぇ。このまま黙って見過ごすなんてこと―――
「ケン!」
会場に流れる音響よりも大きな声で、一人の少年が狼谷の名を叫ぶ。
突然のことに狼谷の身体は止まり、立ち上がろうとしていたあいつはその場にペタンと腰を落とした。
絡み合う視線。リンクとリンクサイドを隔てる壁に身を乗り出している少年は、右目に涙を浮かべながら首を左右に振る。