銀盤少年

「やっぱ凄いね」


隣に立つ優希が言う。


会場はスタンディングオベーション。俺も優希も演技終了と同時に思わず立ち上がったクチだ。


「だな。ミューさんはほんと凄い」


ミューさんの演技には“凄い”という言葉に圧縮出来ないほどの技術と表現と感動が詰まっていて、それでもたった一言にしか表わすことが出来ない自分のボキャブラリーが心底憎い。


普段のミューさんはオタクで天然でどこか抜けてる人だけど、今リンクに立っている人物はとある国のお姫様と言われたって信じてしまうほど、高貴で力強い雰囲気を漂わせている。


可愛くて綺麗で、それでいてストイックなプログラム。ミューさんにしか演じることが出来ないシェヘラザード。


シーズン初戦&初お披露目でこの出来とは……毎度のことながらミューさんには驚かされてばかりだ。


これを滑り込んで磨いていったら、シーズンの終わりにはどうなっているんだろう?


凄く期待。もっともっと観ていたい。
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