銀盤少年

後悔したって遅いけど、元々試合前に集中力を高めるタイプじゃないからさほど問題はない。俺って単純なのだ。


狼谷と入れ替わりでリンクに上がる。


珍しくそんなに緊張はしていない。


相変わらず心臓はバクバク煩いけど、足が震えるとか吐き気とかは全然ない。


グランプリシリーズで結果を残せて、ちょっとは自信が付いたからか?


ふぅっと深く息を吐いて、いつも通り右足からリンクに一歩踏み出す。


スイッチが切り替わる。


頭の中が冷えて、心臓も大人しく普段通りの心拍を刻み出す。


嗚呼、きた。この感覚。


冷静な俺が現れて、頭の中ではこれから滑るプログラムをイメージして最終確認。


調子はいい。身体もキレてる。直前練習もジャンプはノーミス。氷の状態も俺好み。


吃驚するほど条件が揃っている。これなら……。
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