銀盤少年
五回転半
開拓者と挑戦者
「えーと……まだルッツですか?」
「大分良くなったけどまだ怪しいね。国際大会だと取られるかもしれないから、もうちょっと頑張ってみよう」
「さいですか……」
別に練習が嫌いなわけではない。寧ろジャンプ練習は楽しいし好きな部類だ。
ただ永遠にルッツばかり跳んでいたら流石に飽きる。矯正が大事だってことはわかるけど、そろそろ他のジャンプも跳んでみたい。
と、いつもならこの辺で「仕方ないなぁ」っとヒロが察してくれるのだけど、なんだか今日は機嫌が悪い。
うん、諦めよう。今日はルッツの日だと割り切ろう。
それでもヒロのスパルタのお陰で、ルッツは目に見えて良くなった。
基礎のスケーティングも見直したし、全体的に技術が向上しているのも感じている。
先生も驚いているくらいだし、やっぱりヒロは只者じゃない。
二人っきりのリンクは、いつもより物静か。