銀盤少年
いつも騒がしい狼谷はいないし、草太も家の用事で早退。
なんだかんだで遊びに来る優希も顔を出さないし、二人っきりというのは今年に入ってからは初めてだった。
やっぱ部員がいるっていいな。
去年は幽霊部員ばかりだったから一人二人で練習をしてたけど、人がいることに慣れると寂しく感じる。
やる気がないってわけじゃないけど、なんとなくモチベーションというかなんというか。
「はぁ……」
自然と出た溜息。あーあ、無駄に幸せ逃がしちまった。
「ちょっと休憩する?」
「ん? 嗚呼、そうだな。ちょっとだけ」
どうやらヒロは俺が疲れていると勘違いしたらしい。
まあ実際ちょっと疲れていたから、お言葉に甘えて練習は一旦中止。
水分補給をしていると、ヒロは大学ノートを手に神妙な顔つきをしていた。