銀盤少年
「秘密にしておいて、試合でいきなり決めたらカッコイイナーって……」
「だと思った。それで、何回跳べた?」
「まぐれの一発以来てんで駄目です……」
情けないがこれが現実。本格的に練習を始めて間もないけど、一回も成功出来ないでいた。
一回跳べたんだから跳べるはず。
だけどあの時は全く意識せず跳んだから、どのように跳んだのか覚えていなかった。
成功例がないジャンプ。参考になる映像も資料もないから、手探り状態でジャンプのタイミングを探すしかない。
それがどれだけ難しいかは、きっとヒロにもわからない。
ちゃんとした跳び方なんてわからないから、一歩間違えば大怪我に繋がりかねない。
思考覚悟の毎日で、跳び方も幾度となく変えて、そのせいで三回転にも影響が出てきて……ってそうか、それでヒロは勘づいたのか。
やっぱヒロは天才だな。ジャンプの良し悪しだけで俺が何をしてるか見抜くだなんて。
「無謀だって思ってるだろ。でもさ、世界初って響きはやっぱ気持ちいいし、スケート界の歴史に名前が乗るって思ったらなんかすげぇじゃん? それに……」