銀盤少年
あの感覚をもう一度体験したい。
三回転なんかじゃ到底味わえない、あの感覚を―――
ゴキッとヒロが首を鳴らす。
なんで首の骨鳴らしてんの? と聞きたかったが、聞いたら聞いたで絶望しそうだったので止めた。
目頭を押さえて何度目かの溜息をつく。こ、これはかなりご立腹なんじゃなかろうか?
なんでヒロは怒ってるんだ? 黙ってたからか? 世界初とかすげぇじゃんっていう発言が気にくわないのか?
ヒロの右手が上がる。
殴られる! ギュッと眼を瞑ると、頭上から乾いた音と鈍い衝撃が走った。
んへ? なんか軽い?
そーっと目を開けると、ヒロの手には丸められた例の大学ノートが握られていて、俺の膝にそれをポイッと放り投げた。
青い普通の大学ノート。ただ表紙はボロボロで、年季が入っている物だとわかる。